fujibaka’s blog

見たことある風景とどこかに置き忘れてる思い出。

夏休み

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

 

学校の校庭の奥にある松林

その松の木の間から見える海。

船が通ったあとは 大きめの波が寄せてくる。

時々吹いてくる生ぬるい風、

南の空には入道雲

半袖に半ズボンにゴム草履、

麦わら帽子のザラザラトゲトゲが馴染む頃には夏休みも終わる。

入道雲が近くなると「秘密基地」で勝手に雨宿り、

足もとのアリ地獄を落ちてる松葉で掘り起こしながら雨があがるのを待つ。

夕立ちをやり過ごした帰り道は、 ずっと、くすぶってる自由研究をどうするかの大問題の思案。

もやもやしながら今日が終わる。

 

かき氷が食べたい時は

海の家をやってる友だちのところへ行き、

おつかいを頼まれるのを待つ。

黄色(レモン?)が好みだった、

赤(イチゴ?)を頼みがちだが。

瓶のコーラのビッグサイズも相当魅力的だったが、

よほどポイントを稼がないと手が届かない。

 

お盆には親戚が帰省してくる。

叔父や叔母、いとこ達に気遣いしなきゃいけない。

何より母さんが不機嫌なのが気になって、好きではない時間だった。

 

お盆を過ぎると海の色が変わる、

生ぬくかった風に冷たいものが混ざりだす。

この時期には島の北側の誰も来ないビーチを自転車で駆けると爽快だった。

あれだけ好きだった素麺も夏休みの終わる頃には忘れてしまう。

20日になると定期船の増便も終わり、 たかぶっていた島の空気を少しずつなだめていく。

友だちの海の家の片付けを手伝うのはちょっと寂しさもあった。

来年までかき氷はお預けになる。

かき氷の機械の横の黄色い蜜が残ったビンが気になった。

 

いっときしまっていた制服の開襟シャツを母さんが洗濯し直しして アイロンをあててくれる。

勉強机の周りを片付け宿題をまとめる。

手抜きした自由研究と 毎年同じ、家の屋根によじ登って描いた海と向かいの島の絵。

相変わらず海は青で島は緑、

さし色を知ってたらもっと点数を稼げたがそれはそれ。

 

この頃になると夜寝る頃には秋のムシの音が始まる。

せっかく麦わら帽子が馴染んできたんだけど…。

むかしの夏休みは上手くできてた